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学校「9月始業」可能か? 相次ぐ休校延長、現場から求める声も


「学校の始業を9月に仕切り直してほしい」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で小刻みに休校が延長されている学校現場から、そんな声が漏れ始めた。背景には学校再開時の感染リスクへの懸念、その場しのぎに見える対応への不信感もあるようだ。国際的には「9月入学」が主流だが、この時期の急な制度転換が現実的に可能なのか-。

福岡県内の公立中の50代女性教員は、5月6日までという休校期間の先を考えると不安になる。「本当に始まるんだろうか」

休校の約2カ月分を取り戻すため授業は“詰め込み”になる。生徒が密接する対話学習はなし。前を向いて黙々と給食を食べさせ、休み時間は友達とも近づき過ぎないよう口酸っぱく注意しなければならない。

マスクや消毒液は現場でそろえるしかない。教室には校内放送には使えないブラウン管テレビしかない。「こんな状態の学校に来させて、次の学年に送り出していいものか」。いったん収束しても再び感染が広がる懸念がある以上、「いっそのこと欧米諸国と同じ9月始業に改めていいのではないか」と思える。

福岡県立高校の男性教員(30)は再開が不透明な中での授業の準備、授業参観や運動会のシミュレーションに徒労感を覚える。「無駄になるかもと思いながらやっている。仕事ってそういうものなのかもしれないけど…」。休校が延びるたびに計画は練り直し。「国が率先して9月始業と決めてくれた方が、急ピッチでオンライン学習の準備に注力できるのに」と話す。

9月入学は、大学を軸に過去にも議論されてきた。文部科学省は2008年、学校教育法の改正施行規則で入学時期を学長判断で決められるようにした。13年には文科省が有識者会議を設け、留学や長期インターンシップにつながるという利点をまとめている。

16年度には国公私立大の4割近くが4月以外の入学制度を設けたが、60万人以上いる大学全体の入学者に対し、4月以外の入学は約3千人、その約8割は留学生だった。

新型コロナの影響による休校長期化に伴って9月入学・始業を求める声が出始めていることについて、萩生田光一文科相は24日の記者会見で「さまざまなところで声が上がっているのは承知している」「あらゆることを想定しながら対応したい」と述べた。

一方、元文科省官僚の寺脇研さんは厳しい見方を示す。「企業の採用にも影響するし、導入するにも大議論が必要。夢のような話をする時ではない」。学校は再開時に即応できる準備をしておくことが重要であり、現時点で優先すべきなのは困難な家庭環境にある子どもたちのケアだと指摘。「心と体は大丈夫なのか。確認方法も含めて考えてほしい」と強調した。 (四宮淳平、金沢皓介)

「休校延長繰り返すよりも」大阪の高校生が署名呼びかけ、賛同2000人超

再開の基準が見えず、学校生活の見通しも立たない現状を打開したいと、大阪市の高校3年生の女子生徒2人が「9月入学・始業」への制度変更を求め、インターネットで署名を呼び掛けた。26日までの期限で2千人以上が賛同。文部科学省などに提出するという。

呼び掛けた女子生徒(17)は「学校生活はかけがえのない時間。不安を抱えたまま短くなってしまうなら、声を上げるしかないと思った」と語る。9月に終息するかどうかも分からない。ただ、高校最後の行事もできないまま青春の一ページが失われていくのはやるせない。「休校延長を繰り返すよりも、早めに判断して学校休止の期間を決めた方が、学校生活を全うするチャンスが生まれるのではないでしょうか」

原文出處 西日本新聞