新型コロナウイルスの感染対策について、感染症や科学技術社会論などの研究者らが、「空気感染が主な感染経路」という前提でさらなる対策を求める声明を出した。「いまだ様々な方法が残されており、それらによる感染拡大の阻止は可能である」と訴えている。
空気、飛沫、接触・・・ コロナの感染経路は?
声明は、東北大の本堂毅准教授と高エネルギー加速器研究機構の平田光司氏がまとめ、国立病院機構仙台医療センターの西村秀一・ウイルスセンター長ら感染症の専門家や医師ら32人が賛同者として名を連ねた。27日にオンラインで記者会見を開き、説明した。
空気感染は、ウイルスを含む微細な粒子「エアロゾル」を吸い込むことで感染することを指す。エアロゾルの大きさは5マイクロメートル(0.005ミリ)以下とされ、長い時間、空気中をただよう。
厚生労働省のウェブサイトでは、新型コロナの感染経路として、くしゃみなどで出る大きなしぶきを介した「飛沫(ひまつ)感染」や、ウイルスの付着した場所に触れた手で鼻や口を触ることによる「接触感染」が一般的と説明されている。
一方、世界保健機関(WHO)や米疾病対策センター(CDC)はそれぞれ、ウイルスを含んだエアロゾルの吸入についても、感染経路だと明記している。
距離離れてもリスク 「エアロゾル」減らす対策を
声明は、空気感染が新型コロナの「主たる感染経路と考えられるようになっている」と指摘。考えられている以上に距離が離れていても感染リスクはあり、逆に空気中のエアロゾルの量を減らすような対策で感染抑制ができるとした。
そのうえで、国や自治体に対して、ウレタン製や布製のよりも隙間のない不織布マスクなどの着用徹底の周知▽換気装置や空気清浄機などを正しく活用するための情報の周知▽感染対策の効果を中立な組織によって検証することを求めた。声明は、内閣官房、厚労省や文部科学省に送付したという。
医師で民法・医事法が専門の米村滋人・東大教授も賛同者の一人。米村さんは政府の対策は「マクロ対策の一つである緊急事態宣言に大幅に依存している」と指摘。個人の感染を直接防ぐための対策の徹底や、外国の事例の検討などが求められると述べた。
賛同者の西村氏は「人流と(感染拡大という)結果の間にはいくつものプロセスがある。その一つ一つをつぶしていくことがとても大事。そのためには、『入り口』のところの空気感染への対策をきちんとやらなければいけない」と述べた。
原文出處 朝日新聞