米国が北京冬季五輪の外交的ボイコットを決めたことは、まだ態度を決めていない同盟国や友邦国・地域の判断に影響を与えそうだ。ただ、それぞれの事情も絡み、態度は一様ではない。
英国では中国の人権侵害を監視する国際議員連盟設立を主導した保守党のダンカンスミス元党首が「政府も外交的ボイコットを発表する必要がある」とツイッターで訴えるなど米国への同調を求める声が出た。政府報道官は7日、「時期が来れば立場を決める」と説明。ジョンソン首相は閣僚派遣の見送りを検討していると伝えられている。
欧州連合(EU)欧州議会は7月、中国による政府代表や外交団の招待を受け入れないよう加盟国に求める動議を採択した。ただ、拘束力はない。ギリシャのミツォタキス首相はすでに五輪出席の意向を表明している。同国は国内最大の港の開発で投資を受けるなど中国との経済関係が強い。
ロイター通信は7日、2026年冬季五輪を開くイタリアの政府筋の話として、同国は米国への追随を計画していないと伝えた。一方、フランス政府は7日、北京五輪への対応はEUで連携を図る方針を示した。
インド太平洋地域ではオーストラリアやカナダも外交的ボイコットを検討中とされる。豪州政府は7日、「(政府高官を派遣するかは)まだ決定していない」と発表。与党議員から米国への同調を求める声が上がった。カナダ外務省は6日、結論は出ていないが、「中国の人権侵害に関する報道を深く憂慮しており、この問題について同盟国と議論を続ける」との声明を出した。
インドはジャイシャンカル外相が北京五輪開催を支持する姿勢を示しており、政府高官が「スポーツと政治は別だ」と述べるなど、米国の動きとは一線を画す立場だ。ニュージーランドのロバートソン副首相は7日、閣僚派遣を見送ると発表したが、新型コロナウイルスの影響を理由とした。
台湾では立法院(国会に相当)が全面的ボイコットを含む厳しい対応を求める決議案を審議中だ。決議案は台湾独立志向の野党が提出。五輪に参加する台湾の選手が中国で拘束される危険性にも言及している。与党の民主進歩党の一部は賛同するが、「台湾が率先して中国を刺激すべきではない」との意見もあり、与野党の協議が続いている。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって米国の決定は大きな痛手となる。北朝鮮との対話再開に向けた外交交渉の舞台に五輪を活用しようとしていたためだ。外務省報道官は7日、政府は北京五輪の「成功」を支持し、南北関係改善への「寄与」を期待する立場を改めて強調。政府高官らの派遣は「まだ決まったことはない」とした上で、「(米国が)ボイコットへの参加を求めてきたことはない」と述べた。
(ロンドン 板東和正、パリ 三井美奈、シンガポール 森浩、ニューヨーク 平田雄介、台北 矢板明夫、ソウル 桜井紀雄)
原文出處 產經新聞