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「選挙のため」旧統一教会と関係、「敵に回さぬよう」集会に祝電も…銃撃後は見直す動き


安倍晋三・元首相が銃撃されて死亡した事件の後、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家の関係に注目が集まっている。多くの政治家が選挙で応援を受けるなどしているが、過去に「霊感商法」などが社会問題化した宗教団体であり、関係を見直す動きも出ている。

保守系に浸透
「選挙で個人のボランティアとして様々なお手伝いをいただいた」

岸防衛相は29日の記者会見で、同連合との関係をそう説明した。衆院選の際、有権者に支持を求める「電話作戦」などを同連合関係者にやってもらっていたという。「当時は問題がないという判断をしていた」とする一方、「それが正しかったのか、しっかり検討していく」と述べた。

同連合の創設者・文鮮明氏が「反共」を掲げる政治団体「国際勝共連合」を発足させたのは1968年。当時から、安倍氏と岸防衛相の祖父にあたる岸信介・元首相ら自民党を中心とする保守系の政治家と関係を築いてきたとされる。

今回、関係が明らかになった政治家も多くは自民党の国会議員たちだ。

末松文部科学相は2020~21年、家庭連合関係者に政治資金パーティー券計4万円分を購入してもらった。下村博文・元文科相も16年、自身が代表を務める政党支部が関連団体から6万円の献金を受けていた。

野党も、国民民主党の玉木代表が同連合の関連団体の元社長から16年に計3万円の寄付を受けたほか、日本維新の会の松井代表も、約20年前に関連団体の集会に出席していた。

賛同会員」も
なぜ、政治家たちは同連合と関係を結んできたのか。政界関係者の多くは「選挙のため」と話す。

自民党の井上義行・参院議員は、再選を果たした7月の参院選の公示直前に同連合の「賛同会員」になっていた。自身の公約と同連合の考えが一致していたことが理由といい、秘書は取材に「選挙で支援を受けるため」と明かした。

多くの政治家が同連合の集会に祝電を送っていたことも明らかになっている。元衆院議員は取材に「実態のよくわからない団体も多いが、集会への出席を求められた際に何もしなければ、選挙で相手を敵に回すことになる。だから祝電を打っていた」と振り返った。

地方の首長も、同連合側から支援を受けてきた。富山県の新田八朗知事は、初当選した20年の知事選で同連合から支援を受けたことを明らかにし、「手作りの選挙運動をしており、当時の私にとってはありがたいことだった」と語った。

つながりを誇示
一方、同連合の元信者の男性は取材に「文鮮明氏と政治家が握手する写真を何度も見せられた」と話し、同連合が政治家とのつながりを利用していたとの見方を示す。

同連合は1980年代以降、「先祖のたたり」などと不安をあおって高額なつぼや印鑑を売りつける「霊感商法」や、見知らぬ人同士による「合同結婚式」を巡るトラブルが社会問題となっていた。

北海道大の桜井義秀教授(宗教社会学)は「祝電を送るだけでも、団体にとっては応援のメッセージとなり、宣伝に使われる恐れもある。有権者にとって支援団体は投票先を選ぶ重要な情報であり、政治家は支援を受ける団体を明示すべきだ」と話した。

◆世界平和統一家庭連合 =1954年に文鮮明氏が韓国で設立。平和や共生を理念に掲げ、結婚と家庭を重視する。日本では64年に宗教法人の認証を受けた。2015年に旧統一教会から現在の名称に変更した。

原文出處 讀賣新聞