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《この3月に大学院を修了、70代で学生生活を謳歌(おうか)したテリーさん。進取の気性に富んだテレビマンの意欲はいささかも衰えない。五十の手習いならぬ、七十の手習いで始めたパソコンも使いこなしている》
僕、原稿を書くのが大好きなんですよ。パソコンで書くのが。今でもパソコンより手書きの方が早いくらいなんですけど、将来の自分のための訓練にもなると思って。
親交のあった石原慎太郎さんも、もちろん手で書いてたと思うんですけど、脳梗塞を患われてから手で書けなくなって、そしたら、パソコンで書かれるようになって。自分もいずれどうなるか分からないし、それこそ手で書いていると何をするにも大変だなって思って、パソコンを使ってるんです。パソコンだったら原稿をすぐに送れますよね。今も週に1回、アメリカに原稿を送ってるんです。
(プロデューサーの)若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)さんていらっしゃるでしょ。僕、仕事で一緒になって仲良くなったんですけど、あの人、慶応大学の先生なんですよ。彼に「テリーさん、大学院は誰でも行けるから。ただし、修了は誰でもできるもんじゃない。大学院を出なくちゃだめだから」って言われたんです。若新さんのおっしゃる通り、入っただけじゃ一人前じゃないと思って、石にかじりついてでも、という思いで大学院で勉強しましたね。
《ビジネスの世界でも挑戦している。ラジオ番組「渡邉美樹 5年後の夢を語ろう!」(ニッポン放送)で、外食大手ワタミの渡辺美樹会長兼社長と意気投合。同社が展開するから揚げと玉子焼きの専門店「から揚げの天才」の監修をすることになった》
あの人(渡辺氏)は経営の天才ですよね。俺は演出の天才だけど、別に経営の天才ではないから、「ちょっと経営のやり方、教えてくださいよ」って言ったんです。で、「うちの実家、玉子焼き屋ですけど、玉子焼きって感性問わないと思うんです」って言ったんですよ。
テレビのヒット番組って感性問わないじゃないですか。温泉とか旅行とか、動物、ラーメン。お年寄りからお子さんまでみんな好きなものが守備範囲だと思うんですよ。それと一緒で、玉子焼きもお年寄りも好きだし、チビっ子も好きだし、から揚げもそうじゃないですか。「日本人、みんな好きですよね」って話したら、「それ面白いね」ってことになったんです。
アドバイスっていうか、食べて「これおいしい!」とか、「これもうちょっとこういう方がいいよ」とか、俺はプロじゃないから、一消費者として話します。でも結構大変で、コロナ禍で多少縮小したんです。またから揚げが一時ブームになったのが逆に良くなくて、いろんなところが参戦してきて淘汰(とうた)されちゃうから、ブームになんない方がいいんですよ。
《カーネル・サンダースやペコちゃんのように、店頭にはテリーさんを模した大きな人形が鎮座している》
人形に関しては、俺は最初嫌でしたね(笑)。正直言って心配なんですよ。例えば、俺が万が一、交通事故で誰かをけがさせてしまったり、不祥事を起こしたりしたときに、みんなに迷惑がかかりますよね。俺は悪いことはしないけども、それほど真面目じゃないし、女の子ともデートするし(笑)。
だから、こういうのやりだしてから真面目になりましたよ。ちょっとした短い時間でもパーキングに入れて駐車違反しないとか、スピードを出さないとか。だって俺だけのことじゃないから。やっぱり、各店舗で働く従業員の人の責任を負ってる部分もありますからね。
原文出處 產經新聞