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「何も後ろ暗いことはない」中国企業ロゴ問題で辞任の大林ミカ氏、記者会見の主なやりとり

再生可能エネルギーに関する規制見直しを目指す内閣府のタスクフォース(TF)に中国の国営電力会社「国家電網公司」のロゴマークが入った資料が提出された問題で、資料を提出した公益財団法人「自然エネルギー財団」の大林ミカ事業局長と大野輝之常務理事が27日、都内で記者会見した。記者会見の主なやりとりは以下の通り。

大林氏 ロゴが入っていたことにより、それが気がつかなかったことによって多くの皆さまに大きな懸念を抱かせる結果となって大変申し訳なく思っており、おわびを申し上げたい。

大きな誤解を受け、皆さんを不安にさせたのは当然だ。本当に慙愧(ざんき)に耐えないし、あまりにも不注意だったと反省している。

ただし、今回の件は、他の国の影響下にあるとか、国のエネルギー政策をゆがめているとか、そういったことは一切無縁のことだ。他国の政府や企業のデータを引用することは発表には常にあることで、他の方もなさっていることだと思う。

今回の件では総理、(規制改革担当の河野太郎)大臣、国会議員を含む多くの方々を混乱させてしまった。TF委員は一旦辞することととしたい。先ほど大臣とTF事務局には報告しており、大臣からは承認の返事を事務局経由でいただいた。

--中国電網公司と財団の関係は
大野氏 財団と中国企業・政府の金銭的、資本的、人的関係はない。金銭の授受があったか(ないか)で言えば、中国の国家電網の方を財団のシンポジウムに招いたことがある。そのときに登壇料という形でお金を支払ったことはあろうかと思う。

--タスクフォース構成員に就任した経緯は
大林氏 河野大臣から推薦があったという風に聞いている。

--経産省や金融庁の資料にもロゴがあった
大野氏 内閣府に加えて、経済産業省と金融庁の資料にも出ていた。斎藤健経済産業相もいわれているが、なぜこうなったのか、中国企業との関係が明確になるまでは財団をヒアリング対象にしないという話だ。現在、3省庁から財団に対し、中国との関係について資料要求が来ている。誠実に対応したい。何も後ろ暗いことはないので丁寧に説明したい。

--河野氏とのやりとりは
大林氏 月曜日(25日)に(海外出張から)戻ってきたときに大臣から連絡をいただき、今回の件について「いつもいろいろやっていただいてありがとうだけれども、つまびらかに経緯を説明してほしい」ということを言われた。今回の辞任に関しては大臣には相談せず、今日、皆さんにお話しする前にはTF事務局と大臣には話さないといけないということで、メールで連絡した。「大臣からは了承したという連絡があった」という風なメールが(事務局から)来た。

--辞任の理由は
大林氏 発端は単純なミスだったが、社会的な影響が非常に大きく出るミスであったということから、国会で総理や大臣や議員の先生方に質問させるような事態にまで発展してしまった。本来の業務である政策の推進や、TFの運営に支障をきたすのではないかと懸念している。私はまた別の立場から自然エネルギーの政策を推進させていただく。今回の騒動に関しては大変申し訳ございませんでした、ということで辞任した。

--太陽光パネルのほとんどは中国に頼っている。中国国営電力会社から影響を受けているとか、中国を利するように誘導しているのではないかという懸念があがっている。全くないと言い切れるか
大林氏 言い切れる。私どものスタンスとしては当然、日本の企業に頑張っていただきたいと思っているし、自然エネルギーも日本政府がしっかりと産業化していくことを望んでいる。

--財団にも疑惑の目が向けられている
大野氏 われわれは昨日(説明の)プレスリリースを出したが、解明に時間がかかってしまった。その間に大量のツイッター(現X)などがあり、あまり事実に基づかないことも含め、財団が中国の意向で動いているのではないかというものが大量に流れた。いろんな懸念、疑いをもたれてしまったのは残念だ。私どもの政策提言が中国政府の意向を反映したものではなく、純粋に日本の脱炭素化、世界の脱炭素化、世界のエネルギー転換を目指したものだということを示していきたいと思う。それによって疑念を早期に払拭して、本来、われわれが果たすべき役割を果たしていきたい。

--国際的な送電網についてどう考えているか
大林氏 私どもの自然エネルギー財団は国際送電網を推進しているが、財団だけでなく、日本でもかねて国際送電網を推進していた方がいる。日本創成会議も丸紅も提案を出しているし、世界全体を見渡すと、今回の国家電網だけではなく、韓国、モンゴル、ドイツなどのシンクタンク、事業者が提案している。

日本は島国だから他と電線がつながっていないが、欧州では国同士が相互に自然エネルギーの電気を送りあい、相互依存しながら、それを1つの経済の発展の基盤として自然エネルギーを拡大していくということがある。日本が島国だからできないというが、例えば欧州でも英国が島国だし、他にもたくさんの島を抱えた国々がある。例えば英国は欧州連合(EU)を脱退したが、他の国と国際送電網を今も構築、強化していくことで自然エネルギーを促進している。アイルランドも島国だが、英国やフランス、オランダとつながりながら自然エネルギーを拡大している。

2050年のカーボンニュートラルのことを考えたとき、日本は本当に2050年になっても東アジアの国々の中から孤立した国であるのかどうか。それは果たして日本にとって、あるいは他の国々にとって幸せなことなのかどうかということは、考える必要があると思う。

大野氏 国際送電網という考え方は珍しいものではない。日本、韓国、豪州、ニュージーランド以外は、主要な国々は必ずどこかの国とつながっている。効率的にエネルギーの利用を進めるために必要だ。一方で、国際情勢の中で現在、ただちに日本と中国、ましてロシアと送電網を結ぶというのはほとんど現実には可能性はない。

--あくまで財団として、中国を含む国際送電網の必要性を訴えていくのか
大野氏 今、それが重点ではない。それを中心にやっているつもりはない。

--財団は(国家電網が主導した)グローバル・エネルギー・インターコネクション発展協力機構(GEIDCO)には2016年3月から入っていた
大野氏 そうだ。2016年3月ごろに立ち上がったが、国際送電にはいろいろな企業が関心をもっている。国際的な企業がたくさん参加していることも含め、国際送電の議論をする意義があるだろうということで参加した。

--今、国家電網との関係は直接的なものはないのか
大野氏 2016年、2017年くらいにはかなり活発に検討も行ったし、シンポジウムに招いて話をいただくことがあった。2020年以降はほとんど関係がないという状況だ。実体的には、最初に(GEIDCOに)入っていたので、形式的に残っていたというのが実態に近いと思う。それが無用の誤解、疑惑を生んでいる。残るメリットはまったくないし、デメリットのほうが大きい。

--経産相が懸念払拭まではヒアリングに招かないと。影響は
大野氏 仮にこのような状態が続くと非常に大きなダメージ、問題がある。私どもの財団は日本の中でエネルギー転換に関し、具体的な提案を脱炭素化という方向で出している唯一のシンクタンクだ。われわれが本来果たすべき役割は大きい。一刻も早く、疑問が解けるようにしたい。

原文出處 產經新聞