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悲鳴のような鳴き声…増え続ける草食獣キョン タンタンメン具材にも


シカ科の小さな草食獣「キョン」が房総半島を中心に大繁殖している。特定外来生物として対策が進むが、生息域の拡大も懸念されている。

「キョンはイノシシよりも日常的な存在。洗濯物を干していたら近くにいることもある」。房総半島の南東部、太平洋に面した千葉県御宿町で大地雅子さん(52)が営むイチゴ農園では3年ほど前、ハウスにキョンが侵入した。

イチゴの苗を食べられ、ドアのガラスを粉々に割られた。ガラスの新調に10万円ほどかかるため、買い替えず補修して乗り切っている。被害後は、換気目的でのドアの開放を控え、ハウスの周りにネットを張った。

近所の人も多くが家庭菜園や花壇、畑を荒らされているという。「キョンが入らないよう高さのあるネットを張るか、そもそも(野菜などを)つくるのをあきらめた人が多い」と大地さんは話す。

17年間で生息数が7倍に
キョンは中国南東部や台湾に生息し、体長70~100センチほどの小型草食獣。国内は房総半島や東京都の伊豆大島で定着が確認されている。

千葉では、勝浦市にかつてあった民間観光施設(2001年に閉園)からキョンが逃げ出して野生化したとされる。県内の推定生息数は2006年度の約1万2600頭から23年度は約8万6千頭となり、大幅に増えた。定着が判明した自治体は04年度は5市町だったが、20年度は17市町に拡大した。

生態系への影響、人や農作物への被害を防ぐため、キョンは外来生物法に基づく駆除が必要な「特定外来生物」に指定されている。

23年度の千葉県内の農作物被害額は約890万円だった。自家消費の農作物が被害に遭い、数字に表れていないケースも多いという。

「ギャー」と悲鳴のような鳴き声を出すことから、初めて聞いた人が驚いて役所に連絡を入れることもある。

房総半島東部を走るいすみ鉄道(本社・大多喜町)は、キョンやイノシシと列車の接触事故が23年度に44件起きた。列車の遅れや運休の原因となる事故を防ぐため、動物が嫌う高周波音の発生装置の設置を進めている。

原文出處 朝日新聞