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石破首相の「令和の列島改造」成果は未知数 政府機関地方移転、職員の2拠点活動支援


石破茂首相は新年の看板施策に「令和の日本列島改造」を掲げ、その柱となる取り組みとして「政府機関の地方移転」と、政府職員の「2拠点活動」支援などを打ち出した。政府機関の地方移転は年来の課題だが、これまで限定的な成果しか出ておらず、都市と地方の双方に生活拠点を持つ「2拠点活動」にも解決すべき点は多い。思い描く結果が出せるかは未知数だ。

「令和の日本列島改造と位置付け『地方創生2・0』を強力に推し進める。一極集中を見直し、多様性を未来の力にしていく」

首相は6日の年頭記者会見でそう強調した。具体策として最初に政府機関の地方移転を挙げ、改めて地方自治体から提案を募り、肝いりの「防災庁」新設も含めて検討を進めるとした。

すでに兵庫県など複数の自治体が誘致の意向を示しており、設置準備を担当する赤沢亮正経済再生担当相も7日の会見で「防災庁自体が被災した場合の補完機能など、適切に検討を進めたい」と意欲を示した。

政府機関の地方移転は平成26年の地方創生の「総合戦略」に盛り込まれた。首相は初代担当相として取りまとめを主導した。

ただ、10年を経ても目指した成果は出ておらず、首相も関係議員に「中途半端だ」とこぼす。令和5年には文化庁の京都市移転が実現したが、同庁にある9課のうち4課は東京に残り、移転は一部にとどまった。平成30年には総務省統計局が和歌山市に「統計データ利活用センター」を、令和2年には消費者庁が徳島県庁内に「新未来創造戦略本部」を設置したが、いずれも小規模だ。

地方移転が進まない理由について、日本総研の石川智久調査部長は「他の役所や国会議員との調整は東京にいた方がやりやすい」と指摘。官僚には政官中枢の首相官邸から離れたがらない感覚もあるとして「特に地位の高い人ほど嫌がるだろう」と語る。家庭や住宅など生活設計の問題もある。

ただ、地方移転の意義は直接的な人口の移動というよりも「ノウハウやアイデアが持ち込まれ、関係性が深まる」点にあるという。「地方では公務員が足りなくなってもいる。全省庁というより、一部の部局の移転を増やしていくほうが良いのではないか」と語る。

首相が年頭会見で、地方移転の次に言及したのが「2拠点活動」だ。都市だけでなく、地方にも生活拠点を持つライフスタイルを定着させ、活性化につなげる狙いだ。

首相は民間での実践も念頭に「まずは、隗より始めよ。国の若手職員による2拠点活動を支援する制度を新設する」と表明。政府は自治体の地方創生策に対する助言や支援のため、職員を2拠点で活動させる仕組みを検討する。

とはいえ、2拠点活動にも移動や居住コストのほか、育児や教育など公共サービスを受けるための住民票や、納税地、選挙権をどう定めるかという課題もある。石川氏は「例えば地方の大学で教えながら自治体でも仕事をするなど、職員にも相応のメリットがある制度設計が必要だ」と指摘する。

原文出處 產經新聞