ロシアによる侵攻を受けて国外に避難したウクライナの人びとが、徐々に国内へと戻り始めている。ウクライナ当局によると、子どもや女性を中心に、1日あたり3万人近くが帰国している。
「イタリアでの生活は不自由なく、まわりの人たちもよくしてくれた。けれど、ウクライナに戻りたい気持ちはずっとあった」
西部リビウ州出身の薬剤師、オクサナ・バライツカさん(32)は、難民として2カ月を過ごしたローマでの暮らしをそう振り返った。
バライツカさんは侵攻前、リビウの空港から約1キロの自宅で、夫と5歳の長男と暮らしていた。おなかには第2子もおり、妊娠3カ月だった。
空港は攻撃の標的にされる可能性があったため、ロシア軍が侵攻を始めた2月24日の夜、車でリビウを出発。長男や母親と3人でポーランドに入り、友人を頼りにイタリアへ向かった。
ローマでは夫の友人のウクライナ人が、部屋を提供してくれた。着いた翌日、難民申請も出した。侵攻直後だったためか、他にウクライナ人はおらず、審査をすぐに通った。
公共交通は無料になり、産院も紹介され、妊婦健診を受けた。ボランティア団体による食料や服の提供も受けた。薬剤師であることが伝わり、大手薬局での仕事も紹介してもらった。言葉こそ通じなかったが、少しだけできる英語や翻訳アプリを使えば、大きな問題はなかった。
原文出處 朝日新聞